中耳炎

中耳炎のイメージ

耳は外耳、中耳、内耳の3つの構造からなります。中耳は鼓膜の奥にあり、外耳と内耳の間にある中耳腔(ちゅうじくう)で炎症が起きている状態を中耳炎といいます。
中耳炎は、主に風邪などによるウイルスや細菌が鼻と耳をつなぐ耳管と呼ばれる管を通って中耳に感染を起こすことにより中耳粘膜に炎症が起こる病気です。
中耳炎には急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎などがあります。

急性中耳炎

中耳炎の中で最もみられる病気です。多くの場合、風邪(上気道炎)をきっかけに起こります。
こどもは免疫力が低く、保育園や幼稚園など感染しやすい環境にあります。そのため風邪をひくことが多くなります。急性中耳炎は3歳までに85%の子供が一度はり患するといわれています。急性中耳炎が子どもに多い理由として、子どもの耳管は大人よりも短く、角度が水平に近いため、風邪をひいたときに鼻水の中にいるウイルスや細菌が中耳に入りやすいためといった解剖学的要因や耳管機能が未熟であることによるといわれています。黄色い鼻水を出しているような時は注意しましょう。

症状

症状はズキズキする激しい耳の痛み、発熱、耳だれ、耳がつまった感じがなどあります。小さいお子さんは言葉で痛みを訴えられないので、機嫌が悪くなってぐずったり、耳をよく触ったりします。夜泣き、ミルクの飲みが悪いなどの様子が見られることもあります。このような症状がみられたときは早めに医療機関を受診してください。

治療

治療は症状の程度により変わります。軽度であれば経過観察の場合もありますが、多くは投薬治療がなされます。重症例、鼓膜の腫れがひどく耳痛・発熱が高度な例には鼓膜を切開し、たまった膿の排出を促すことがあります。また、重症の中耳炎を繰り返す場合には鼓膜にチューブを入れて留置する場合もあります。急性中耳炎は完治までに2~3週間程度かかることが少なくありません。耳の痛みがなくなっても診察が必要です。急性中耳炎から滲出性中耳炎や慢性中耳炎に移行することがあります。
鼻水が溜まってすすると、中耳にウイルスや細菌が再度入り込むリスクが考えられるので適度に鼻をかむことも大切です。小さいお子さんは、鼻水の吸引だけでもお気軽にご相談ください。

滲出性中耳炎

鼓膜の奥の中耳腔に滲出液という液体がたまる中耳炎です。中耳は耳管と呼ばれる管によって鼻の奥とつながっており、耳管を介して換気されることで外気圧と気圧差がないように調節されています。耳管の機能が悪いと中耳の換気がしづらくなります。中耳の換気が不良になると中耳粘膜に炎症がおこり、中耳腔に滲出液が貯留して滲出性中耳炎になります。子どもは耳管機能が未熟なため滲出性中耳炎になりやすいと言われています。また、急性中耳炎から滲出性中耳炎に移行する症例も少なくありません。「鼻すすり」も原因になります。他にも、アデノイド肥大、副鼻腔炎による鼻汁、上咽頭がん、加齢などによる中耳換気障害も滲出性中耳炎を引き起こすことがあります。

症状

強い痛みが起こらず、聴こえにくさや耳のつまった感じ、水がたまっている感じ、耳鳴りなどの症状がみられます。痛みが少なく難聴の程度も軽い場合が多いので気づくことが遅くなる場合もあります。子どもの場合、テレビの音が大きい、呼びかけても返事をしない、大きな声で話すなどがある場合、滲出性中耳炎を疑います。

検査・診断

滲出性中耳炎は、顕微鏡や内視鏡を用いて鼓膜を観察することで診断します。さらに、難聴の程度を確認するために聴力検査や鼓膜の検査(ティンパノメトリー)を行うことがあります。内視鏡を用いて鼻内や上咽頭を観察することで副鼻腔炎、アデノイド肥大、上咽頭がんなどの有無を確認します。成人では滲出性中耳炎を転機に上咽頭がんが発見されることもあるため注意が必要です。

治療

滲出性中耳炎は完治するまでに2週間以上かかることも少なくなく、数カ月間かかることもあります。治療はたまった滲出液を排出しやすくするために去痰剤を内服します。滲出性中耳炎を引き起こす原因となっている病気に対する治療も行っていきます。鼻炎や副鼻腔炎などがあれば抗菌薬や去痰剤、抗アレルギー薬などを内服します。また、鼻から耳に空気を送る耳管通気という処置をすることもあります。長期間の薬物療法で改善がみられない場合や難聴がある場合は鼓膜切開術、鼓膜換気チューブの留置を検討します。鼓膜切開術は鼓膜の一部を切開して中耳腔にたまった滲出液を排出する手術です。また、症状を繰り返す場合は鼓膜にチューブを入れる手術を行うこともあります。成人であれば鼓膜チューブ留置は局所麻酔で可能です。しかし、子どもでは安静が保てないため全身麻酔で行います。

慢性中耳炎

中耳の炎症が慢性的に起こっている状態です。多くは急性中耳炎によってあいた鼓膜の孔がそのままになって慢性中耳炎へと進展することによるといわれています(慢性化膿性中耳炎・慢性穿孔性中耳炎)。慢性中耳炎には鼓膜に孔があいている慢性穿孔性中耳炎、鼓膜が中耳の一部と癒着している癒着性中耳炎、周囲の骨を破壊する真珠腫性中耳炎など様々な病態が含まれます。
癒着性中耳炎は耳管機能の障害により中耳換気が上手くいかないことにより、鼓膜が中耳腔の壁と癒着する病気です。正常な音の伝達がうまくいかず、強い難聴を引き起こします。
真珠腫性中耳炎とは、鼓膜表面の皮膚の成分が中耳内に入り込んで、真珠腫という固まりを形成する病気です。その固まりの内容物である上皮成分が層状に蓄積する姿が、時に“真珠”のように白く光沢のある球状を呈するため真珠腫と呼ばれています。真珠腫には骨を溶かす性質があります。

症状

慢性化した炎症による難聴や耳だれがみられます。耳の痛みはまれですが、感染により起こる場合もあります。
真珠腫性中耳炎ではさまざまな症状がでることがあります。中耳には音を伝えるための耳小骨や、顔の筋肉を動かす顔面神経などがあり、さらにその奥の内耳には三半規管や音を聴神経に伝える器官などがあります。真珠腫が大きくなると中耳の骨を破壊して聞こえが悪くなったり、さらに病気が進行するとめまいや顔面神経麻痺を起こしたりする方もいます。

治療

感染などによる耳だれがある場合、抗菌薬の内服や点耳薬により耳だれの改善を目指します。また、鼓膜の穿孔を通じて中耳腔内の洗浄などの処置を行います。根本的治療は手術になるので必要な時は総合病院へ紹介します。中耳炎の手術のひとつである鼓室形成術では中耳腔を清掃し、耳小骨の再建や鼓膜の孔の閉鎖を行い聴力の改善を目指します。